骨がもろくなる骨粗しょう症
骨粗しょう症とは、骨の密度が低下してスカスカになり、骨折しやすくなる疾患です。
進行すると、尻もちをついたり、くしゃみをしただけで骨折することもあります。がんなどとは異なり直接的に命を危険にさらすものではありませんが、日常生活の質を大きく低下させるリスクを持ちます。特にご高齢の方は、脚や背骨などを骨折したことをきっかけに寝たきりになってしまうケースも少なくありません。
骨粗しょう症は、症状を自覚しにくい疾患です。特に女性は閉経後から定期的に骨密度検査を受けることをおすすめします。
骨粗しょう症の原因
骨にも、皮膚などと同じように新陳代謝があります。古い骨が吸収される「骨吸収」と、新しい骨が形成される「骨形成」のバランスが維持されて、骨密度も保たれます。
このバランスが崩れ、骨吸収の方が多くなると、少しずつ骨が少なくなっていき、もろくなっていきます。その要因には、以下のようなものが挙げられます。
加齢
腸管でのカルシウムの吸収の低下、カルシウムの吸収を促すビタミンの働きの低下、運動量の低下などによって、骨密度は20歳頃をピークとして、基本的にはその後低下していきます。
また、特に骨密度の著しい低下が見られるのが、女性における閉経後です。骨形成を助けるエストロゲンの量が急激に少なくなることから、それに伴い骨密度も低下しやすくなります。閉経後からの定期的な骨密度検査をおすすめしているのはこのためです。
生活習慣の乱れ
カルシウムを筆頭に、マグネシウム、ビタミンD、ビタミンKの不足によって、骨形成が不足します。
また、運動不足による骨への刺激の不十分、アルコール・カフェイン・塩分の摂り過ぎ、無理なダイエットなども、骨粗しょう症の原因となります。
薬剤・病気
ステロイド・抗てんかん薬・メトトレキサート・ワーファリン・ヘパリンといった薬剤の投与、糖尿病・慢性腎臓病・COPD(慢性閉塞性肺疾患)・甲状腺疾患・関節リウマチなどの疾患が骨粗しょう症の原因になることがあります。
ただし、薬剤は医師が必要と判断した上で使用しているものですので、「骨粗しょう症の原因になるから」と自己判断で中断しないでください。
骨粗しょう症の症状
- 身長が低くなる
- 背中が曲がってきた
- 背中、腰に痛みを感じる
- 身長の縮み、背中の曲がりを指摘された
- 食事量が少ないのにすぐに満腹になる
- 以前ぴったりだった服が大きくて合わない
骨粗しょう症は、症状を自覚しにくい疾患です。
健康診断における「身長」の項目は見落としがちですが、必ずチェックするようにしましょう。
骨粗しょう症のセルフチェック
- 好き嫌いが多い
- 牛乳・乳製品・小魚をあまり食べない
- 納豆・豆腐などの大豆製品をあまり食べない
- 野菜・海藻類・キノコ類をあまりたべない
- インスタント食品、レトルト食品をよく食べる
- 運動習慣がない
- 晴れている日に外出しない
- 痩せ気味
- 喫煙している
- アルコール・カフェインをよく摂る
- 骨粗しょう症の家族歴がある
- 閉経している
- 4センチ以上背が縮んだ
- 背中が曲がってきた
- ちょっとしたことで骨折したことがある
上記の15項目のうち、いくつ当てはまりましたか?
4個以下の方
骨粗しょう症の心配はほぼありません。
これからも正しい生活習慣を続けていきましょう。
5~8個の方
将来的に骨粗しょう症になる可能性があります。
一度、骨密度検査を受けましょう。
9~12個の方
将来的に骨粗しょう症になる可能性が高いと言えます。
定期的に骨密度検査を受けましょう。
13個以上の方
すでに骨粗しょう症である可能性が高いと言えます。
お早目にご相談ください。
骨粗しょう症になりやすいのは閉経後の女性
閉経後、女性は骨形成を助けるホルモン「エストロゲン」の量が急激に少なくなります。それに伴い、骨密度も低下しやすくなります。閉経後の女性のうち半数以上が骨粗しょう症と推定されていますが、治療を受けているのはそのうちの20%以下です。
閉経後は1年に1度、骨密度検査を受けましょう。生活習慣の改善などによって、骨密度の低下を防ぐことも可能です。
骨粗しょう症の検査と診断
骨粗しょう症は、問診、骨密度検査、血液検査を行った上で診断します。
問診
症状や骨折の有無、既往歴、薬剤の使用状況、閉経の有無・時期などをお伺いします。
骨密度検査
当院では DIP法と被爆の問題のない超音波骨密度測定装置による骨密度測定を行っています。
血液検査
血液検査によって、骨形成と骨吸収のバランスを数字で確認することができます。
骨粗しょう症の治療法
食事療法・運動療法・薬物療法を組み合わせた治療となります。
食事療法
カルシウム、ビタミンD、ビタミンKといった栄養素を意識して摂取します。
またビタミンDは、日光を浴びることで生成・活性化されます。
カルシウムを多く含む食品
牛乳・チーズ・小魚・干しエビ・小松菜・チンゲン菜・大豆製品など
ビタミンDを多く含む食品
しいたけ・煮干し・イワシ・サケ・マグロ・チーズ・卵黄・キノコ類など
ビタミンKを多く含む食品
納豆・しそ・春菊・ほうれん草・ブロッコリー・海藻類・チーズ・抹茶など
運動療法
適度な運動によって骨に刺激を与えます。また筋力を維持・向上させ運動機能を高める(転倒しにくくなる)という意味でも有効です。
激しい運動は必要ありません。ウォーキング、ストレッチ、ヨガ、エアロビクス、水泳など、年齢や運動機能に合ったものを提案します。
当院では、医師・理学療法士が連携しながら運動療法を進めていきます。
薬物療法
現在、骨粗しょう症の治療薬としてさまざまなものが使用されています。
骨の吸収を防ぐ薬
ビスホスホネート
骨を吸収する細胞を抑制します。
サーム(SERM)
閉経後の骨粗しょう症に適しており、60歳以上の女性に使用することが多くなります。
デノスマブ
骨が吸収されにくくする薬です。半年に1回、注射投与します。
カルシトニン
骨粗しょう症の骨折において、除痛効果に優れています。
骨の形成を促進する薬
副甲状腺ホルモン薬
骨の形成を促す唯一の注射薬です。使用は2年間限定となります。
その他の薬
ビタミンD剤、カルシウム薬、ビタミンK剤などを使用します。